R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」ザルツブルグ2001年
登場人物が目隠しして連れてこられるなど、冒頭から、一体何?の世界。風変わりだけど、決して歌手がやってますという感じがなく、いかにも現実感があって、様になっている面々のお陰か、なんとなく引き込まれてしまいます。今までに見た映像の中で一番おもしろかったです。
ツェルビネッタの仲間たちの卑猥さはちょっと正視できないようなところもあったり、その暴力性もショッキングです。そんなこんなで、いわゆるひんしゅく物の演出かもしれませんが、このオペラの本質をついているのではないかと思いました。不思議な説得力があります。
アリアドネに語りかけるツェルビネッタの歌、真実があふれている感じで、胸が熱くなります。全然別の世界で生きてきた二人の女性の心が通い合うのが伝わってきます。字幕もいいのかもしれません。
誤解かもしれないけど、後半は、どこかの待合室あるいはラウンジのようで、もしかしたら、精神病院のラウンジかもしれない・・ような。アリアドネとバッカス、掃除のおばさんみたいな妖精たち、奇妙な存在感があります。アリアドネとバッカスのコンビ。これがなんとも言えないおもしろい雰囲気。このポラスキ、この演出のこの役にぴったり合って、とても好きです。バッカスもドレスデンと同じ歌手とは思えないほど、役にはまってます。
全体的に、この作品に本来的にある、深刻さとうそっぽさ、おかさしが入り混じって、満足感が得られるようです。ひょっとしたら、「いってる人たち」かしらと感じられ、その方向で見ると非常に納得がいくんですけど、絶対そうとも言えないかしらという、あいまいな感じ・・・ 不可解なことを病気のせいにしてしまうのって、あまりにも安直だと思うので、こういうどっちともつかないところにあるのは巧いやり方かも。舞台はごちゃごちゃ感がなく、すっきりしていて、集中しやすいです。
R.シュトラウス作曲 ナクソス島のアリアドネ
ザルツブルグ音楽祭 2001年
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヨッシ・ヴィーラー&セルジオ・モラービト演出
プリマドンナ/アリアドネ:デボラ・ポラスキ
ツェルビネッタ:ナタリー・デッセイ
テノール歌手/バッカス:ジョン・ヴィラーズ
作曲家:スーザン・グラハム
この記事へのコメント
私も一度見ただけで、ささーっと書く気が起こったのは本当に久しぶりです。
>アリアドネに語りかけるツルビネッタの歌、真実があふれている感じで、胸が熱くなります。
飲みながら、二人が意気投合していく様子、いい場面でしたね。ツェルビネッタの歌詞って、女性だったら誰でも共感できるところがあると思いますし、踏ん切りがつかない…でも…という、アリアドネの戸惑いも、理解できます。ホフマンスタールは、オンナゴコロをよく理解していらっしゃったんでしょうね(^^
>不可解なことを病気のせいにしてしまうのって、あまりにも安直だと思うので、こういうどっちともつかないところにあるのは巧いやり方かも。
仰る通りだと思います。私も自分のところで「病んでるっぽい」と書きましたけど、この曖昧な感じが、妙に心地いいんですよね…そして音楽の力を、巧みに利用している…と思います。
でも、これだとなんでもありで、はっきり言って、騙された感じがして、私は好きじゃないです。
伝統的メトのをチラっと見るチャンスがあって、このツェルビネッタのレイプ?まがい?の演出を思い出しましたが(ここしか覚えてないのもなんだかなぁですけど)、どこをどうやったらこういう発想になるのかわかりませんでした。
ということで、やっぱり、サイコドラマ治療中の患者様ということかな。